星降

一を聞いて～設定、屋敷時代。
ガイ＆ナタリアがルーク至上主義。

唐突に発覚しました。

それは唐突過ぎる出来事だった。


ルークは朝からずっと上の空だった。少なくとも、ガイが朝食の用意が出来たと声を掛けにきた時からずっと。
それは今現在――ガイとナタリアを交えてのお茶会中――も継続していて。
ふと、ルークが二人に視線をよこした。

「なぁ、今、ひとつ"わかった"事があるんだけど」
「あら、何が"わかった"んですの？」

あの事件以来、根気よくガイやナタリア、ファブレ公爵夫妻や果てにはメイドや使用人、白光騎士に至るまでが努力した結果。ルークは「"わかった"」と自己完結してしまう前に人――主にガイかナタリア――にその内容を聞いてもらい、意見を求めるようになっていた。
そうなる前は、その、うん、割と荒療治が取られていたりした。その話は置いておこう。

そして今、ルークは"わかった"事を二人に聞いてもらおうと、珍しく困惑したような雰囲気を醸し出しつつ、口を開いた。

「…今朝、着替えてる時にボタンに髪が引っかかって、うっかり少しばかり抜けた」
「おま、大丈夫だったのか？」

「まぁ、髪だし、数本だし。で、暫くしたらその抜けた髪が消えた」


「「……は？」」


消えた？髪が？どうして？
困惑する二人を尻目にルークは淡々と続ける。

「きらきら光って、多分音素に還った…？　普通、髪は音素に還らないよな。音素に還るとかいう現象を起こすのは魔物くらいだろ？」
「あ、あぁ…そうだな」
「それで少しばかり"わかって"る本の内容を思い出してたんだけどな…フォミクリー、とかいう技術だか何だかの本に、そういう現象が該当する存在の事が書かれてた。で、"わかった"んだけど」

それは、最近やっと表してくれるようになった、悲しみを帯びた表情。

「俺、レプリカだ」

ひとじゃない、つくりもの。
おれ、"ルーク"じゃなかったんだ。
それが"わかった"んだ。

しん、とした沈黙が部屋に広がった。どこまでも静かな空間。

それを打ち砕いたのはルークの呟き。

「じゃあ、やっぱり、おれは、いらな「「ルーク！」」

ルークの声を遮りながらほぼ同時にガタリと立ち上がり、ナタリアはルークを抱きしめ、ガイは――彼もそうしようと思ったがいかせん女性恐怖症が邪魔をした。ちょっと顔が青い――真剣な表情でルークを見詰める。
それにルークが不思議そうな顔をして――。

「ナタリア…？」
「いらないなどと、そのような事、言わないでくださいまし…っ」
「…ガイ？」
「俺達はお前の事が大切だ。たとえお前が"ルーク"で無かったとしても、俺達がこうして今、一緒にいるのはお前だっ」


だからいらないなんていわないで

おれの
　　　　　　　だいすきな"ルーク"
わたくしの

それはいまめのまえにいるあなただけだけなのだから


ルークは、二人の想いに驚き目を丸くして――泣き出してしまった。
一世一代の思いをして告白をした彼は、まだ自分への好意を受け入れきれない、ちいさなこどもに過ぎなかったのだから。
もう何年も聞いていないルークの泣き声に、幼馴染二人は顔を見合わせて、嬉しそうに笑ったのだった。


――ああ、やっと泣いてくれた――



















+その後の一騒動+

「…ガイ、わたくしは叔母様へお話してきますわ。その間にルークを」
「ああ、赤い目のままじゃな…ほらルーク、顔洗うぞ」
「…う、ん？……なんで母上？」
「「協力者は多い方がいいから（ですわ）」」

その日、ファブレ公爵家に激震が走ったのは言うまでも無い。
しかし翌日、その激震が何もなかったかのように日々が過ぎていくのだった。

ただ、水面下で王女と使用人が『愛しい子』の為に動きはじめたという事実を残して。








（ガイ様、これ以前に激しく本名とか実家（？）の事とかゲロってます。つーかルークに「"わかった"事を包み隠さず報告するようにっ」とか言ってる手前嘘ついてる自分にいたたまれなくなって暴露ったというか。その辺でもひと悶着ありましたが解決済み。
　そのことをファブレ公爵は知りませんがシュザンヌ様とナタリアは知ってます。わー公爵ハブられてる。
　
　で、この事件以後「やたらと裏に精通しだす王女」とか「たまに主席総長に連れられてダアトに出入りする金髪の青年」やらが出現しだすのですがそれは別の話（…）

　…あれ、気が付いたらガイとナタリアでルーク至上主義救済計画になってるような。

　あ、ガイはルークとナタリアの前だけタメ口です。他の目があると使用人の鑑。
　最初はナタリアにもそうだったけどルーク関連で話し合ったり連合組んでる内に普通に友人関係に。っつーか寧ろ盟友。

　三人で幼馴染って何かよくないです…か…？）