忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/01 12:54 |
ルシエル
"彼"の帰還後、グランコクマにて。

("彼"の視点)







おれはだれでもないそんざい。
"ルーク"と"アッシュ"はそらのうえでえーと、ローレライいわくいちゃいちゃしてるらしいから、よけいにおれはふたりじゃないわけで。
じゃあおれはだれなんだろう?
おれはだれとしてそんざいすればいいんだろう、ってふたりにきいたんだよな。
あ、うん。うえで。ちょっとだけふたりと、それからローレライとはなししたから。

そしたらな―――





++++++




「へぇー」
「…えと」
「ほぉー」
「……あの」
「ふーん」
「………その」
「陛下、いい加減にその子を離しなさい」
「えー、いいじゃないか。お前らは戻ってくるまでに堪能済みなんだろ?」

俺も堪能したいんだ!ふざるんじゃありません。陛下、本当にいい加減にしてください。
頭の上で飛び交うそんなやり取り。
現在の己の位置の所為でちょっとうるさいと思ってしまった。
その現在位置とは…

「抱きしめたって減るもんじゃないだろ!」
「「貴方(陛下)の場合減りそうなんです」」
「…お前らほんっと仲いいよな」

……遠い目になってもいいんじゃないかなぁ。
ジェイドとガイラルディアがいじめるー、とさらにおれを抱きしめる力を強めるマルクト皇帝陛下。
実年齢はともかくおれの外見は一応成人済みなんだから絵的にアレじゃないか?
とか考えつつ"記憶の知識"からこれから逃れるのは相当の苦労が必要だ、というのを引き出して…本当にどうしよう、とちらりと己の背後にいる二人―――ジェイドとガイへ視線を送った。助けて、という意味を込めて。

「陛下、その子を離さないというなら問答無用でインディグネイションですがいかが致しますか?」

にーっこり。そんな擬音が聞こえ、いや見えた。

「そもそもまだまともな報告もしていないんですから…早く離していただけないと俺の方もゲージが上がりきりそうです」

あくまでも爽やかな笑顔。しかし言ってる事は物騒極まりない。

「…ちぇっ」

やっと解放され、ダッシュでジェイドとガイの後ろへ避難する。
苦笑する陛下が二人の間から見えたけど知るもんか。

「嫌われたか」
「自業自得です」
「わかってる、で……簡単な事は一応先立って送られてきた文書で把握してるが」

さっきまでの雰囲気からガラリと変わって…あー、これが皇帝か。なんとなく"知って"たけど実際見ると圧倒される。
ジェイドとガイもきちんとした立ち振る舞いだ。うわかっこいー、と思ったおれに罪はない、よな。
だから今度は視線を向けられてもしゃんと立って、陛下を見詰め返した。

「"おれ"は"おれ"です。"ルーク"と"アッシュ"は音譜帯で元気にしてます。だから心配しないで、って伝えるように言われておれはこの地におりてきました」

伝える相手はかつての仲間と、それから陛下を含めた割と限られた人のみ。
そういえば他の人にも伝えにいかなきゃな。あとまわしになっちまうけど。

「そうか…元気なんだな」
「はい、いちゃいちゃしてます」
「…そうか」

『いちゃいちゃ』に苦笑したけど、その中に優しいものが見えた。
うん、陛下はいいひとだ。この人に伝えてくれ、って言った二人の(主にルーク)気持ちもよくわかる。

「あ」

そういえば。

「…おれ、名前いってない気がする」

ぽつりと呟いた。
ふむ、とジェイドが小さく頷いて。それを見てガイが笑った。

「では、最初の課題です♪」
「きちんと自己紹介、できるよな?」

優しい微笑み。あったかい。
これから一緒にいるから、だから最初がかんじん。
俺は二人の後ろから前へ進み出て、これであってるよな?と思いながら一礼した。

「改めて、はじめまして陛下。おれは―――」



「そしたらな―――誰かに名前付けてもらえばいい、って」
「それ、ルークが言ったのか?」
「うん、アッシュも同意して、その後『お前が考えたってロクな名前にならないだろうから丁度いいだろ』『アッシュ酷い!』『テメェ、自分がチーグルをなんて呼んでたか忘れたとは言わせねぇぞ!』云々で喧嘩になってた」
「…その光景が目に浮かびますねぇ」
「だな…」
「だから、おれ、ジェイドとガイに名前つけてもらいたいんだ」
「え…」
「だって二人はおれをおれだって認めてくれた。おれを連れて行ってくれた。だから二人に決めてほしい」
「……~~~~っ」
「ガイ、落ち着きなさい」
「だ、だって旦那!こんなかわいいいきもの…!」
「いいから落ち着きなさい、私だって耐えてるんですから」
「??」

「…じゃあ、これでどうでしょう?」
「…あぁ、いいなこれ」
「きまった?きまった??」
「ええ、決まりましたよ」
「今からお前の名前は…」




「ルシエル…ルシエル、です」

それは『聖なる焔の欠片』を意味する言葉。
大切な、大切な…"おれの名前"。

「どうぞ、これから宜しくお願い致します」

嬉しくて、こころから笑った。





PR

2008/05/24 17:33 | Comments(0) | TrackBack() |

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<家族 | HOME | "家族"が~の設定>>
忍者ブログ[PR]