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2024/05/01 19:19 |
子はなんとかに似る
似てるというか何というか。










折角なんだから遊びに来い、との陛下直々の言葉をジェイド経由で賜ったルシエルは宮廷へと足を運んでいた。
グランコクマに来て謁見した時が一度目。今回が二度目である。
にも関わらずこんな一般人が入れもしない場所に居て平然としていられるのは、ひとえに"知識"のおかげだ。ちょっぴり感謝。だって、じゃなきゃもっと心臓が危ないはずだ。今でも十分大暴れだけど。と心の中で呟いた。

ちなみにガイも途中まで一緒だったのだが、何でも待ちきれなくなった陛下が脱走かましたとかで入れ違いになったらしく、恐らく屋敷を襲撃中――しかし誰も居ない――の陛下を連れ戻す為にこの場から離れていた。
流石に動き回るのもはばかれるのでそのまま、ほけーっと中庭を眺めたりとかしていたルシエルなのである。

――そう、確かに自分はぼけーっとしていた筈なのだ。割と、そこそこに、上機嫌で。

なのになんで今、自分はこんなにも微妙な気分なのだろう。
嗚呼それはきっと自分の目の前でなんかほざいてる高慢ちきなおっさんの所為だ。それ以外に考えられない。

要するにルシエルはガイを――ガルディオス伯爵をあまりよく思ってない貴族に言われる筋合いの無い事を延々と言われ続けていたのだった。かれこれ10分くらいは確実に。
それをはぁ、そうですか、と適当に流しつつ、浮かべるのは微妙な笑み。
くそう、おれまだ生後一ヶ月も経ってないのになんでこんなドロドロとしたコミュニケーション能力をつちかわないといけないんだろ。
ぶっちゃけおれはもう泣きたい。

ちらちらと遠くから此方へ向けられる視線。
宮廷勤めの人々の殆どは、ルシエルが先日ガルディオス伯爵と兄弟になった人物だと知っていた。
そしてつい先ほど伝令の如く陛下付きのメイドがやってくるまでは本当に仲睦まじい兄弟のように笑いながら歩いていたのも知っている。
知っているからこそ視線の意味するもの殆どはルシエルに対する同情と心配。

それに沈みかけていた心がちょっと浮上する。
ここの人達みんなやさしーなぁ…。なのに、なんでこのおっさんは……。

ガイの――母上の事を悪く言うんだろう。


―――ムカツク。


すぅ、と今まで浮かべていた笑みを無くして。再び浮かべた笑み――微笑み。


―――いいたいことは我慢するなって言ってたもんな。


そして俺は微笑んだまま「あの」と、おっさんの言葉を遮って―――言いたい事をぶちまけた。







その微笑みを、その気配を、その言葉を、遠くからとはいえ偶然余す事無く目撃し聞いてしまった不幸なとある兵士は語る。

「微笑んだまま、声の調子も明るく、しかし的確に臓腑を抉るようなやたら丁寧な口調は、多少子供っぽい部分があったとはいえ…いえ、だからこそ、こう…精神的にクるというか。ですからそう思ったんです。

あれはまるで小型化したカーティス中将だ、と」







数時間後、連れ戻されその出来事を聞いたマルクト皇帝陛下は盛大に爆笑し。
ルシエルの義理の兄であり育ての親である伯爵が「ああ、こんなところに影響が…」と遠い目をしたのであった。

そして遅れて伝えられた大きいほうの中将は「ほほう、私の大切な二人に…ねぇ…」と、それはそれはとても綺麗な微笑みで呟いたのだった。








(「何故それを私に言うのです?私に言う事によって兄上を直接罵倒した気持ちになれるとしたらあなたの頭の中は相当お花畑ですね。ていうか私の前で兄上の悪口はやめていただけませんか?いえ、私の悪口ならいくらでも甘んじて受けましょう。しかし兄上の悪口は本人に向かって言うのがフェアというものではありませんか?ああ、ひょっとして一緒に陰口をたたいてくれるご友人に恵まれないかわいそうなお方だったのですか。それは気付けずに申し訳ありません。しかしだからといって私の大好きな兄上の(以下略)」

こんな事をジェイドの真似っこな微笑で延々いわれ続けた貴族のおっちゃん。
さらに後日に本物のジェイドに延々嫌味をくらい、その後数週間に渡りトラウマになったそうですよ)
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2008/05/29 21:53 | Comments(0) |

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