ありそうな多分IF話。
親善大使出発直前。
ガイが黒かつルーク至上主義。
ジェイドはガイ合流時に手痛い説教喰らって態度改め&色々板ばさみで苦労中。
ティア(とついでにアニス)に厳しい。
「イオン様がいないんですよぅ~っ!」
叫ぶ導師守護役の少女に騒然とするアクゼリュス親善大使一行――ただし、騒いでいるのは当の守護役と神託の盾兵士の女性のみ。
探しに行かないと!手伝ってください~っ!そんな事を口々に言い出す二人に、ジェイドはどうしたものか、と小さく溜息を吐いて――ちらりと護衛としてルークの後ろに控えているガイへと視線を送った。
現在使用人モードの彼は何故か微笑を浮かべていて――しかし雰囲気は真っ黒だった。
黒い。黒すぎる。寧ろ殺気に近い。ジェイドには彼の頭上にのみにさしかかる暗雲の幻を見た。
彼と合流してから此方、手痛い説教を喰らい態度を改めたジェイド対しては本来の性格であろう好青年ぶりを見せてくれるし、彼らが本当に仲のいい幼馴染である事すら晒してくれているのだが――こと、このダアト軍人二人が絡むと彼は完璧に使用人としての態度でかつ、とてつもなく黒かった。
主人の手前口を出すことは滅多に無いが(寧ろもう言っても無駄だと悟ったともいう)主人の事を馬鹿にする発言が飛び出す度、彼の剣が抜かれそうになるのは日常茶飯事だった。正直ジェイドはまさか自分が胃薬の世話になるとは思いもしなかった。
そんな物騒な事態に全く気付かない二人は鈍いのか自分の都合のいいようにしかことを受け止めないのか…。
そしてそんな黒気配には慣れきってしまっているルークは――
「なんで探さないといけないんだ?」
と、心底不思議そうな表情で言ったのであった。
彼はよくも悪くも――悪いとか言うと使用人が笑顔で剣に手をかけるが――純粋だ。
そんな彼にまるで「何もわかってないのねっ」と見下した表情を浮かべる二人。
「イオン様がいないと大変じゃないですかぁ~っ!」
「そうよ!イオン様に万が一の事があれば和平に支障が出るわ!」
いや全然全くそんな事は無いんだが、ってか何もわかってないのはお前らじゃね?
ジェイトの心の中の突っ込みはそんな感じだった。
ガイの場合それに「っつーか俺のルークに何言っとんじゃゴルァ」が加わる。
ぎゃんぎゃん喚く二人と対照的に黙り込んだままの二人。
そんな中でやっぱりルークは不思議そうにしながら「だって」と喚く二人の声を遮って。
「誘拐犯は被害者を家まで届ける義務があるんだろ?」
ティアが教えてくれたじゃねーか、そんな事くらい"わかってる"ぜ。キムラスカじゃ誘拐は罪だけどダアトじゃ返せばいいんだよな。
そう言ったルークの表情は、淡々としてはいたが純粋で、それが本当なのだと信じて疑わない。
アニスが絶句し、ティアの顔が青ざめていく。
「大丈夫だってちゃんと"わかって"るから。責任を持って返すのが義務なんだろう?」
それは嫌味でも断罪でもなく、本当に純粋なこどもの言葉。
「違うわっ!」とティアが叫ぶように言ってもルークは「だって、それがダアトの常識なんだろ?」と首を傾げるばかり。
その様子をジェイドはどうしたものか、と眺めていた。
常ならばこの事態を収拾するのはかの使用人…しかし。
ちらりと彼を見やるとにこにこと笑っていた。それは愉しそうに。
ああ、そういえば。
自分がルークに曲解させてしまった事をガイは親切丁寧に違うんだと言い聞かせていたけれど、彼女らが曲解させた事には(一部を除いて)まったくの手付かずだった事を思い出した。
ひょっとしてガイは、こういう場面を楽しむ為にわざと訂正しなかったのではないのだろうか。
そんな疑問を抱いてしまうのは仕方が無かったのかもしれない。
(「え、だって。ジェイドの旦那はちゃんと理解してくれて、態度も改めてくれて、それから色々ルークに教えてやってくれてるじゃないか。でも彼女らは相変わらず上から見下してばかりで、こっちとしてもそんな奴のために誤解解くなんて面倒したくないんだ。 それに墓穴は自分で掘ってもらわないと(超笑顔)」
なんて事を後にガイが言ったのは定かではありません。
何故かジェイドが苦労人に。ああそうか、ガイがはっちゃけ黒だからお鉢が回ってきたのか、かわいそうに(お前)
この続きは考えてません。単発にも程がある。
ただ「誘拐犯は被害者を責任を持って返すのが常識なんだろ?大丈夫"わかってる"って」って言わせたかっただけという(殴) )